ETV特集『漱石が見つめた近代』村上新悟さん朗読

昨年12月に放送されたドキュメント番組に村上新悟さんが【朗読】という形で参加されていました。

ちょうど大河ドラマ『真田丸』がもうすぐ終了するっていうタイミングだったと思います。この頃は兼続、朗読、ラジオドラマ、イベントと・・・村上ファンとしてはかなり嬉しい悲鳴が続いていたんですよね(すべてNHK関連でしたがw)。個人的にはラジオドラマもすごく好きだったので折を見て感想書いてみたいと思っています。

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ETV特集『漱石が見つめた近代』~没後100年 姜尚中がゆく~

2016年12月3日(土)放送(Eテレ)

出演:姜尚中 ほか / 朗読:村上新悟

このドキュメンタリーは夏目漱石の没後100年に当たり、姜尚中さんが漱石がたどった道を旅をすることでその考えに迫っていくという内容でした。

夏目漱石といえば明治時代の有名な作家として認識している人が多いと思いますが(お札の顔にもなりましたし)、実は小説家になる前に彼がどのような考えを持っていたのかという話はあまり知られていないのではないでしょうか。私も漱石の実情についてはほとんど知りませんし、本も学生時代に義務感から読んだ記憶しかないので(苦笑)内容もロクに覚えてないしどんな思想を持っていたのかまで考えたこともありませんでした。

没後100年ということでドラマも何本か作られていましたが、今回はドキュメントとして夏目漱石の想いに迫るなかなか興味深い番組だったと思います。村上さんが朗読で参加していなかったら見なかったかもしれない番組なので、こういう形で出会えてよかったです。

出発点は姜さんの故郷でもある熊本から。いまだ地震の傷跡が生々しい熊本城からの出発でした。

熊本は夏目漱石がまだ「金之助」と名乗っていた時代に教師として赴任し、妻の鏡子と出会い結婚した場所でもあります(ちなみに前任地は愛媛の松山で「坊ちゃん」はその時の体験がモデルになってます)。姜さんと漱石文学の出会いは学生時代に渡されたという『三四郎』から。この物語の中に出てくる「あるフレーズ」が漱石のどのような想いから出てきたのかずっと気になっていたそう。このドキュメントはそれを見つけに行く旅といった感じで進められていきました。

以下、村上さん朗読について少々触れていきたいと思います。

村上さんが担当していたのは、番組中に出てくる夏目漱石(金之助)の記した言葉のパートでした。予想していたよりもたくさん登場してきたので、村上さんの美声を味わうにはファンにとっては特にwもってこいな構成になっていたと思います。昨年「スタジオパーク」に出演されたとき、夏目漱石の『吾輩は猫である』のさわりを朗読する企画があったんですけど、もしかしたらこの番組があったからその題材が選ばれたんじゃなかろうか!?とすら思ったww。

美声も言わずもがなではありましたが、何よりも、抑えたトーンでありながらも重みがあり…一言一言を丁寧に紡ぎだしているかのような読みっぷりがとても素晴らしかったです。淡々とほぼ最初から最後まで静かな口調だったのですが、その言葉に退屈するという瞬間が私は一度もありませんでした。まぁ、これはファンのフィルターが思い切りかかっているのでそうも感じたのかもしれませんが苦笑い、それを抜きにしても聴き手の心に静かに確実に、村上さんの朗読していた言葉のどれかは沁みこんでいたのではないでしょうか。

昨年の『真田丸』HP内での企画だった直江状全文朗読を村上さん担当されましたが、あの時はかなりドラマチックに煽る感じで読んでいて聴き手の多くに強烈なインパクトを残しました。だけど、その言葉調子に圧倒されたというのもありましたがそれ以上に私は、村上さんの発する一つ一つの言葉の力強さがとても印象に残ったんですよね。

『真田丸』の公式ホームページに、直江兼続役の村上新悟さんによる直江状朗読の完全版が原文と現代文の両バージョン公開されました。でも最初にこのニュースを聞いた時、また村上さんに直江状読ませたのかと正直思ってしまいました。どうもNHKさんは村上さんの低音でよく

今回の夏目漱石パートの朗読は終始抑えたトーンでしたが、あの直江状朗読の時に感じた言葉と同じ力強さを感じました。これってすごいことだと思うんです。なんだろうなぁ…村上さんの『朗読』って、言葉が活きてるってすごく感じるんですよね。だから声だけなのに、聴いていると容易にその情景が頭の中に浮かんでくる。抑揚をつけていなくてもそれだけの説得力を感じさせるというのは、なかなか多くの人にできる技ではないように思います。

と、まぁ、これも思い切りファン目線なので褒めすぎになっちゃってるかもしれませんけどね(笑)。

漱石 -イギリス時代ー

イギリス時代の漱石パートは、主に留学中だった漱石が感じた出来事を静かに語る感じ。しかしながら、イギリスの近代化を目の当たりにして抱いてしまった漱石の苦悩が朗読から浮かび上がってきました。特に、ボーア戦争に勝利したイギリス軍のパレードを見かけたときの漱石の鬱々とした感情を語っている読み方が印象的でした。

漱石はこのイギリスの近代化を冷ややかな目で見ていて、帰国した後の明治日本の光景をそれと重ねて危惧する思いを強めていったようです。たしかイギリス留学から帰国した漱石は精神的に病んでしまったという話がありましたが、こういうことも原因の一端だったのかもしれないなと思いました。

漱石 -作家-

帰国して2年後に『吾輩は猫である』で作家デビューした夏目漱石。ここの冒頭部分を村上さんが朗読したのですが、すこし明るめのトーンでハッキリ読んでいたのがとても印象的でした。この小説は、明治日本を風刺する内容も多く含まれていると…そうだったのか!冒頭とラストしか覚えていない私はけっこう目から鱗状態でした。

『坊っちゃん』が書かれたのはロシア戦争に日本が勝利したころ。坊ちゃんの朗読はなくてちょっと残念。

そして、3作目の『三四郎』が発表されます。日露戦争に勝利した日本が急速に近代化を進めグイグイ上り調子に浮かれている頃にかかれた物語だそう。三四郎が熊本から上京する汽車の中で会った広田先生の言葉、これがこのドキュメントの中の大きなキーワードになっています。

「亡びるね」

村上さんは『三四郎』の中の文章を抑えながらも二人の人物がそこに見えるような朗読をしていました。抑えつつもセリフの部分は微妙な抑揚がついていて、淡々としながらも二人の会話の様子が容易に浮かんできました。その中で朗読された、『三四郎』の中の

「亡びるね」

は、非常にインパクトがありましたね。近代日本の発展を皮肉った一言なのですが、その時の広田先生の一言を非常に明確に読んでいたと思います。今に日本はパンクして亡びるんじゃない?みたいな、ちょっと上から目線的というか。あれをどう読むかってこのドキュメントの中ではすごく重要で、村上さんはそこの意図をすごく的確に掴んでいたんじゃないかなと思いました。

漱石 -エッセイー

さらに漱石はアジアを旅していて、その体験を朝日新聞に綴った「満韓ところどころ」という資料も村上さんの朗読で何度も出てきました。日露戦争の爪痕を漱石の感じたところを連想させるような読み口で語られていたのもすごく印象深かったです。

漱石がアジアの旅を終えたばかりの頃に伊藤博文暗殺事件が勃発。ちょっと前に自分が立っていた場所で伊藤が暗殺されたということを知った漱石は大きな衝撃を受けたようです。その事件のことを漱石は小説『門』の中で触れています。この時の村上さんの朗読が非常に面白かった。

食卓を囲んで伊藤事件について語る場面があるのですが、お米という女性パートの読み方がその時代の主婦みたいな雰囲気が出ていて、思わず顔が浮かんでしまったほどw。特に

「あら、何故?」

の読み方が最高でした笑う。それに対する宗助の最後の「こうはいかないよ」っていう読み方も意味深ぽくてとても印象に残りましたね。殺されたのが伊藤だったから名を残せたのであって、庶民の自分たちだったら「こうはいかないよ」と。すごい朗読の言葉に説得力がありました。

そのほかにもいろいろと漱石に迫るドキュメントがあって、漱石の独白や小説の一文が出てくると村上さんの朗読が始まり・・・最後までとても見ごたえがある番組でした。お堅い内容ではありましたが、私はこの番組けっこう好きで何度かリピートしながら見ています。村上さんの朗読が非常に生きたドキュメントに仕上がっていると思います。

ちなみに後日BSでもこの番組を少し短くまとめたものが放送されました。こちらは薬師丸ひろ子さんのナレーションと村上さんの朗読。短縮バージョンながらもスッキリまとまった見やすいドキュメントになっていました。

声の良さで注目されることが多いのですが、村上さんの発する言葉の力強さもぜひ注目してほしいです。抑えた抑揚でもこれだけずしりと印象に残る朗読ができるっていうのは私はとても素晴らしいことだと思います。

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